乾式粉体操作に於いて粒子に働く力は粒子の凝集・付着など様々な現象に係わっており、最も重要な要素と言える。しかしながら既存の研究では遠心分離法等のように巨視的であり、系に多くの粒子を含む平均的な描像、粒子が平面から離れる直前の最大付着力のみを議論にするに留まっており、個々の粒子に働く静電気力等、相互作用力のナノ、ミクロ領域に於ける発生メカニズムの詳細は殆ど解明されていないと言える。こうしたナノ、ミクロスケールのメカニズムは微粒子だけの問題に留まらず微細現象を扱うマイクロマシンなどを設計する上で基本的な知見をもたらすことになると考えられる。一方、近年の微粒子の高機能化要求や製造技術の発達に伴いコーティング粒子や複合粒子が利用されてきているが、こうした多成分からなる粒子は局所的帯電現象の様に単一成分からなる粒子に比べ複雑な系となることが予想される。そこで本研究ではコーティング粒子のモデルとして金コーティング粒子を用い、原子間力顕微鏡(AFM)を応用し気相中に於けるコーティング粒子-金属表面間に働く相互作用力を直接検討した。 金コーテイング粒子を金コーティング金属基板に接近させる際に遠距離から斥力が生じ、この力はフォースカーブの解析により静電気力によるものであることが分かった。通常の接触帯電による静電気力とは異なり、引力でなく斥力であり、高湿度でも発現し、接触後も減少せず強く働くことがわかった。 この斥力はコーティング方法に依らず発現したが、コーティング膜厚が大きくなるにつれ斥力は小さくなることがわかった。斥力は非コーティング表面と金コーティング層間に生じたナノメータオーダの局所的双極子によるものであることが示唆された。 粒子上の不均一に分布している電荷の代わりにそれと同じ電界を生じさせる仮想電荷を導入することにより、斥力を定量的に表現することが可能となった。
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