研究概要 |
ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)が形成する逆ミセル有機相と水相との抽出系に,トリオクチルアミンなどの長鎖アミンを有機相側,または,ジエタノールアミン(DEA)などの水溶性アミンを水相側に添加した場合の水およびタンパク質の抽出に及ぼす影響を調べた. 長鎖アルキルアミンを添加した系ではリゾチームの逆抽出過程について詳細に調べ,リゾチームの逆抽出は,アミンからアンモニウムイオンの生成,逆ミセルを形成しているAOTとアミンの結合による逆ミセルの破壊,リゾチームと相互作用しているAOTとアミンとの結合によるリゾチームからのAOTの除去の3つの過程を経て起こっていることを明らかにした. 水溶性アミンの逆ミセル相への抽出挙動と水の抽出量の増加について詳細に調べ,水溶性アミンの抽出と水の抽出の定量的関係を明らかにした.DEAを添加した系で,BSA(Bovine Serum Albumin)をモデルタンパク質として抽出挙動を明らかにした.DEAを添加すると,抽出可能なpHの範囲が等電点より高いpH側へ拡大し,抽出率も増加した.このことより,DEAを添加するとAOTとの静電相互作用によりアミンが逆ミセルへ抽出されて逆ミセルの膨潤が起こるとともにAOTとBSAの静電反発が抑制されることが示唆された.さらに,DEA濃度を増加させることにより,抽出されたBSAの逆抽出も行えることが明らかとなった.DEA濃度のみを変化させることにより,タンパク質の正抽出と逆抽出プロセスを構築できることを明らかにした. 添加するアミンの疎水性の違いにより,疎水性が高い場合には逆ミセルの破壊,親水性が高い場合には逆ミセルの膨潤と構造変化を引き起こすことが出来,この逆ミセルの構造変化を利用して高効率なタンパク質の抽出プロセスが構築できることを明らかにした.
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