研究概要 |
本年度は,デンドリマーの内部に導入された金属ナノクラスターをFT合成触媒に用いるための基礎的な知見(金属クラスターのサイズと活性,選択性との関係)を得るため,通常のシリカ担体上に様々な方法で金属Coクラスターを生成させ,そのFT合成活性,選択性を調べた。これまで,シリカ上に金属Coクラスターを生成させるためCoの硝酸塩あるいは酢酸塩をシリカに含浸した後,それをH_2で還元するという方法が行なわれてきた。酢酸塩を用いたほうがより微小のCoクラスターが生成するが,これはシリカとの相互作用が強いため,容易に還元されず,結果的に低い活性しかえられない。一方,硝酸塩と酢酸塩を混合したものを用いると,単独の塩を用いた時より高い活性が得られる。これは,はじめにCo硝酸塩が金属Coに還元され,そこで生成したスピルオーバーH_2がCo酢酸塩の還元を促進するためと推定されている。本研究では,酢酸塩の還元をさらに効果的に行なうため,これまでより高い温度(これまでは673K,本研究では573K-873K)で還元した時のFT合成活性,選択性を調べた。 反応はすべてスラリー床式反応装置を用いて行なった。硝酸塩を用いて調製した試料の活性(CO転化率)は,773K以上でH_2処理した時のほうが673Kの時より低かった。これに対して,酢酸塩および硝酸塩と酢酸塩の混合物を用いて調製した試料の活性は,773Kで処理した時のほうが673Kの時より高く,H_2処理温度が773Kを超えた時の活性は673Kの時のものより低かった。興味深いことに,773Kで還元した場合,酢酸塩を用いて調製した試料の活性は混合物を用いて調製したものとほぼ同じであった。また,生成物はいずれも主として直鎖のn-パラフィンで,連鎖成長確率は約0.9とこれまで報告されているものと同程度であった。還元した試料のEXAFSを測定し,Coクラスターの微細構造を調べた結果,混合物を用いて調製した試料の場合,773Kで還元することにより,金属Coクラスターが凝集することなく,Co酸化物の割合が減少することが分かった。一方,酢酸塩を用いた試料の場合は,673Kで処理しても大部分のCoは酸化物として存在しており,773Kでようやく一部のCoが金属クラスターとして存在することが明かとなった。この金属Coクラスターは混合物を用いて調製したものと比較すると,きわめて微小であった。EXAFSの結果は、TOFがクラスターサイズに依存する可能性があることを示している。一方,生成物選択性はクラスターサイズに依存しない。
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