研究概要 |
本研究課題はオレフィンの重合を精密に制御する新しい高性能遷移金属錯体触媒の設計・合成と、その重合機構解析に関する。具体的には、代表者らが今までに設計・合成に成功した非架橋のシクロペンタジエニル(Cp)-アリロキシチタン錯体触媒による研究成果を基盤に、より高性能を発揮する非架橋のハーフメタロセン型のチタン錯体触媒の設計と創出を目的としている。 平成13年度の研究成果は以下の通りである。 上記アリロキシ配位子より電子・立体的効果が広範かつ精密に制御できる可能性の高いアミド配位子に注目し、各種錯体の合成を試みた。特にアニリド配位子を有するチタン錯体に注力し、(C_5Me_5)TiCl_2[N(2,6-Me_2C_6H_3)(SiMe_3)](1)がエチレンの重合に極めて高い触媒活性を示すことを見出した。合成条件の最適化により、Cp環上の置換基の異なる各種錯体の合成・同定に成功し、同重合における触媒活性への置換基効果の序列が、C_5Me_5>>1,3-Me_2C_5H_3,Cpとなること、1を用いるとエチレンやプロピレンの重合では超高分子量ポリマーを与えるものの、1-ヘキセンの重合では低分子量オリゴマーを与え、使用するモノマーの影響を強く受けることが明らかとなった。さらに(1,3-Me_2C_5H_3)TiCl_2[N(2,6-Me_2C_6H_3)(SiMe_3)]X線結晶構造解析に成功し、触媒設計における有用な情報を得た。非架橋のハーフメタロセン型チタン錯体触媒で、アニリド配位子であっても配位子上の置換基を設計することにより高し触媒活性を示す錯体触媒を創製できたことは、この分野では先導的な研究成果であり、上記の結果をまとめて、現在学術論文を投稿中である(K. Nomura et al.,Synthesis of nonbridged(anilide)(cyclopentadienyl)-titanium(IV)complexes of the type, Cp'TiCl_2[N(2,6-Me_2C_6H_3)(R)],and their use in catalysis for olefin polymerization)。 得られるポリマーの分子量が使用するモノマーの影響を強く受ける事実は、精密な共重合を指向する本課題にとって有用な知見であり、今後さらに研究を発展させたいと考えている。なお、研究成果の一部は昨秋の触媒討論会で発表し、今春の日本化学会及び東京触媒国際会議(TOCAT4)で発表予定である。
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