研究概要 |
昨年度の研究結果を元にして分子動力学プログラムMXDORTOを用いて均一メソポーラスシリカの一つであるMCM-41のモデル化を行った。モデル(MD-MCM)は、直径3.8nmの円柱状原子排除領域を六方構造に配列させた4.4nm×7.621nm×3.0nmの直方体セルに2547原子(849SiO_2 unit)を初期条件として作成した.0.1Mpa,300Kにおいて、このモデルの細孔壁はSi(SiO_4四面体)が3〜4層程度で形成されていた.構造モデルからシミュレートした粉末X線回折プロファイルには,a_o=4.32nmのヘキサゴナル相(100),(110),(200),(210)に起因するピークが観測された.モデルの細孔構造の解析から、比表面積は1072m^2g^<-1>,細孔容積が0.55cm^3g^<-1>と計算され、細孔容積がすべてシリンダー状の細孔であると仮定した場合,メソ細孔の直径は3.19nm,細孔壁の厚みは1.13nmと見積もられた. MD-MCMの2体相関関数からSi-Oでは160pmを極大とする鋭いピークが示され,Si-Siでは300pm付近を中心としたブロードなバンドが示された.MD法でシミュレートしたシリカガラス(MD-glass)の2体相関関数と比較すると,Si-Oの原子間距離は等しいがSi-Siの原子間距離は,MD-MCMが短いことが示された。このモデルは,昨年度報告した回折実験の結果を定性的に再現できるモデルであった. MD-glassとMD-MCMの角度分布と比較すると,SiO_4四面体間Si-O-Si結合角は狭く,シロキサンリングサイズがより小さい状態で存在することを示唆し,回折実験におけるFSDPの傾向と定性的に一致した.さらに,MD-MCMのモデルでは,四面体内部のO-Si-O結合角もMD-glassに比較して広い分布を取り、歪んでいることが示された.
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