研究概要 |
Nocardia diaphanozaria(JCM3208)の異性化反応について検討した結果、0.075%(v/v)のラセミ体の2-フェニルプロパン酸を培養液に添加することで異性化酵素が誘導され、酵素活性が約25倍に向上した。また、休止菌体反応によって4.56mMのR体の2-フェニルプロパン酸を光学純度95.8%e.e.で得ることができ、スケールアップを行っても光学純度、収率が低下することなくR体の2-フェニルプロパン酸(92%e.e.)を0.68gL^<-1>で生産できた。本異性化反応は、厳しい基質特異性を示し、2-フェニルプロパン酸とそのチオエステル誘導体には作用したが、2-フェニルプロパン酸アミドや他のアリールプロパン酸にはほとんど作用しなかった。酵素調製のために粗酵素での安定性を検討した結果、1mMジチオスレイトールを含む20%(v/v)のエチレングリコール溶液の添加によって、破砕時の活性を100としたとき1週間後でも氷上で約80%の活性を維持できた。本酵素のコファクターについても調べたところATP, Mg^<2+>, CoAが必要であり、本異性化反応にはアシルCoAシンセターゼ、2-アリールプロピオン酸CoAエピメラーゼ、チオエステラーゼの3酵素が関与していると考えた。これらの結果から本異性化反応は、以前に報告されているイブプロフェンの異性化と類似の反応メカニズムで進行することが示唆された。
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