研究概要 |
本研究では,臨床用ハイブリッド型人工肝臓として,ブタ肝細胞を使用する場合の免疫反応回避に関する検討と免疫反応を回避できるヒト由来肝細胞を人工肝臓に利用する検討を行った。 1.ポリウレタン発泡体孔内で形成させたブタ肝細胞スフェロイドをヒト正常血漿中で培養した結果,培養2日目には機能の急激な低下がみられた。これに対して,ヒト正常血漿中にフサンを投与することによって,ブタ肝細胞スフェロイドの機能は徐々に低下するものの,培養3日間は機能発現を維持した。この結果より,フサン投与がヒト-ブタ間の免疫反応抑制にある程度効果があることをが示された。 2.肝芽種由来のヒト株化肝細胞であるHepG2細胞をポリウレタン発泡体孔内で培養した。培養3日目にはスフェロイドが形成され,その後もスフェロイドを形成した状態で増殖した。単層培養では消失していたHepG2のアンモニア除去機能は,スフェロイドの形成によって回復した。ただし,その機能レベルは初代ヒト肝細胞の約1/10であった。一方,アルブミン分泌機能はスフェロイド化によって単層培養の約2倍の機能発現を示し,初代ヒト肝細胞と同レベルであった。これらの結果より,HepG2細胞をスフェロイド化することによってハイブリッド型人工肝臓として利用できる可能性が示された。ただし,細胞の増殖に伴ってスフェロイドが巨大化し,内部に壊死層が発生することから,現在,過増殖の抑制および高機能化のための工夫を検討している。
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