本研究では、ハイブリッド型人工肝臓の実用化のために、免疫反応や異種ウイルス問題を回避できるヒト由来肝細胞を利用する検討を実施した。 1.昨年度の検討において、ヒト株化肝細胞HepG2がポリウレタン発泡体(PUF)孔内でスフェロイドを形成し、従来の単層培養よりも高機能発現ができることを見出した結果を受け、この培養法を利用した培養モジュールを開発した。体積約20cm^3(長さ6cm、直径2cm)のPUFモジュールを作製し、HepG2細胞を培養した。その結果、細胞はスフェロイドを形成した状態で増殖し、培養10日目には播種細胞数の約5倍の高密度培養ができることを見出した。また、細胞の増殖に伴ってアルブミン分泌機能も上昇し、培養7日目には初代ブタ肝細胞や初代ヒト肝細胞と同等以上の活性を発現できることが示された。しかし、細胞増殖に伴うスフェロイドの巨大化により、その内部に壊死層が発生するという課題が示された。 2.上記問題の細胞の過増殖の抑制および細胞の分化誘導によるさらなる高機能化を目的に、ディッシュ培養のPUF/HepG2スフェロイドを用いた検討を実施した。その結果、酪酸ナトリウムを添加した培養培地を用いることによって、細胞の増殖が抑制され、酪酸ナトリウム処理をしない場合と比べてアルブミン分泌やアンモニア除去機能が数倍上昇することを見出した。本方法は、ヒト由来肝細胞を利用した高機能なハイブリッド型人工肝臓の開発に有望な手段と考えられる。現在、上記のような細胞の分化誘導操作(酪酸ナトリウムを含む分化誘導剤の検討、最適濃度の検討、処理操作方法の検討など)の最適化を行うとともに、モジュール培養における応用を進めている。
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