脳内リズム現象と細胞内代謝現象を用いた階層的情報処理システム機構の解明

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13750743
• 研究種目: 奨励研究(A)
• 研究機関: 九州工業大学
• 研究代表者: 夏目 季代久 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 助教授 (30231492)
• キーワード: 脳内リズム現象 / 細胞内蛋白キナーゼ / Ca 2+ / カルモジュリンキナーゼ / 海馬 / KN-93 / てんかん波 / bicuculline

研究概要

本年度は、細胞内代謝過程のリズム発生に対する効果をてんかん波を中心に調べた。
1)厚さ4,500μmの海馬スライスに、5-20μMのビキュキュリンを投与すると、投与10分後にてんかん波が誘導された。てんかん波発生直後は、てんかん波の発生周波数は高かったが、その後減少し、発生後10分後位で定常になった。その時の定常平均周波数は、5μMで0.094±0.001(平均値±標準誤差)Hz、10μMで、0.086±0.001Hz、20μMで0.100±0.001Hzであった。てんかん波の発生周波数が経時的に減少する期間をてんかん波の成熟期、定常状態になっている期間を定常期と定義する。
2)てんかん波にテトロドトキシン(神経発火阻害薬)やCNQX(興奮性シナプス阻害薬)を投与すると波は消失した。
3)てんかん波の成熟期に、100μM AP5(NMDAレセプター阻害薬)を投与すると、定常発生周波数は有意に減少したが、定常期にAP5を投与しても、影響はほとんど無かった。
4)てんかん波の成熟期に、CaMKIIの阻害薬であるKN-93を加えると、濃度依存的に、てんかん波の定常周波数を減少させた。
以上の事より、ビキュキュリンによって誘導されるてんかん波の発生には、神経発火、シナプス伝達が関与し、さらに、てんかん波の発生周波数の調節にNMDAレセプターからのCa2+流入を介したCaMKIIの活性化が関与する事が示唆された。従って、計画調書研究目的の図1の(2)に示したように、細胞内蛋白キナーゼ活性(PKs)が電気現象であるリズム発生に影響を及ぼす事が示唆される。平成14年度は計画調書に記載した通り、リズム誘導が細胞内代謝過程にどの様に影響するか調べて行き、脳内リズム現象と細胞内代謝現象を用いた階層的な情報処理システム機構を解明していきたいと考えている。

研究成果

• [文献書誌] 夏目季代久, 米谷快男児: "海馬スライスにおける自発的電位振動SHN0の興奮性シナプス伝達に対する作用"第24回日本神経科学、第44回日本神経化学合同大会. PE3-PE195 (2001)
• [文献書誌] Kiyohisa Natsume, Kaoru Kometani: "Spontaneous hippocampal neuronal oscillation (SHNO) and epileptic discharges in guinea pig hippocampal slices"Abstracts of ICBP 2001 (Kyoto). 75 (2001)
• [文献書誌] K.Natsume, K.Kometani: "SPONTANEOUS HIPPOCAMPAL NEURONAL OSCILLATION (SHNO) IN GUINEA PIG SLICES"Soceity for Neuroscience Abstracts 31st Annual Meeting (San Diego, CA, USA). 847.13 (2001)
• [文献書誌] Kiyohisa Natsume, Kaoru Kometani: "Oscillations modulate synaptic transmission and long-term potentiation in hippocampal slices(招待講演)"第2回九州脳シンポジウムプログラム抄録集. 15 (2002)
• [文献書誌] G.Ogata, K.Natsume: "THE EFFECTS OF CA2+/CALMODULIN KINASE INHIBITOR KN-93 ON BICUCULLINE-INDUCED EPILEPTIC DISCHARGES IN HIPPOCAMPAL SLICES"Soceity for Neuroscience Abstracts 32nd Annual Meeting(Orlando, FL, USA). (2002)