研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、細胞内代謝過程のリズム発生に対する効果をてんかん波に関して調べ、また新たに、その過程のθ波に対する効果を調べた。さらに、リズム発生の細胞内代謝過程に対する効果を調べるために、冷却遠心機を購入して調べ始めた。 1)モルモット海馬スライスにおけるビキュキュリン誘導てんかん波に対して、細胞内キナーゼCaMKII阻害薬であるKN-93を投与すると、てんかん波が抑制された事を昨年度報告書で報告したが、本年度は,この詳細な機構を解明するために、てんかん波に対する興奮性シナプスの関与を調べた。興奮性シナプス伝達阻害薬であるCNQXを投与すると、てんかん波は、濃度依存的に抑制され、10μMで完全に消失した。 2)さらに、通常の海馬スライスにおいて、KN-93によって、刺激誘発の集合興奮性シナプス後電位(pEPSP)は、1)で見られたてんかん波抑制濃度範囲において、減少した。 2)の結果より、興奮性シナプスが、てんかん波誘導に関わっている事が明らかになったが、さらに、CaMKIIは、海馬神経シナプス前終末における神経伝達物質の放出制御に関わっているので、1)で見られたKN-93によるてんかん波抑制作用は、シナプス前終末に対する作用であると考えられる。 3)細胞内代謝過程のリズム発生に対する効果を観測するために、ラット海馬スライスで観察されるθ波に対するLTPの効果を調べた。海馬スライスに、カルバコールを投与し、スライスにθ波を誘導後、LTPを誘導し、θ波に対する影響を観察した。その結果、LTP誘導30分後、θ波の周波数は減少した。これは、LTPにより、CaMKII等の細胞内キナーゼが活性化した結果、θ波発生周波数を調節しているCa2+活性化K+チャネルが、リン酸化活性化され、θ波に変化が生じたと考えられる。 以上の結果より、てんかん波、θ波で見られたように、細胞内の生化学的代謝過程は、確実に、電気的な神経リズム発生と関係していることが明らかになった。今後は、電気的なリズム現象が、細胞内代謝過程に、どの様な影響を及ぼしているか、測定していこうと考えている。
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