サブピコ・フェムト秒領域における顕著な現象として、群速度分散(GVD)、自己位相変調(SPM)が挙げられる。GVDは光伝搬物質の屈折率分散により生じ、パルスの時間的広がりとなって観測される現象である。SPMは光自身の電磁界強度により、光伝搬物質の屈折率が変調受け、その結果スペクトルが広がってしまう現象である。これら2つの現象を適切に利用することにより、新しい計測法を確立できる可能性があることを申請者は見出した。すなわち物質の存在する媒質中を通過したレーザー光のGVDとSPMを評価することで、物質の有無、その存在場所に関する情報を同時に得られると予測される。本研究では、超短パルスレーザー光による非線形光学効果を利用した新しい分析法を提案し、その原理について詳細に検討するとともに、基礎実験を行うことを目的とする。 平成13年度には、本計測法で用いるGVD、SPM、吸収等を考慮した空間と時間に関する複雑な偏微分方程式の数値計算による解法を試みた。このために2台の高性能パーソナルコンピューターを平成13年度設備備品として購入した。計算では最初に光ファイバー中での超短パルス光の伝搬について、文献を参考にして再現を試みた。その結果、光ファイバー中におけるパルス伝搬に関しては、問題なくコンピューター上で再現できた。ただし、高速フーリエ変換(FFT)を利用するために、周波数的に詳細に見ようとすると時間情報が欠落し、時間に重きを置くと周波数情報が不足するという問題点が明らかとなった。現在、この点について改善策を検討している。また、光ファイバーは石英などの固体材料でできているが、本法は液体媒質中で行う必要があるため、計算に不可欠な種々の物理常数を集めているところである。来年度は、実際の実験条件に近い条件で数値計算を試み、その結果に基づき実験まで行いたいと計画している。
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