光触媒反応で有機化合物の変換を行なう場合、有機化合物を溶解させた溶媒に光触媒粉末を懸濁させて光を照射するのが通例であるが、有機化合物の多くは水に溶けないので有機溶媒を使う必要がある。申講者は、相溶性のない水と有機化合物の界面に光触媒が配置できれば、有機溶媒を必要としない反応系が構築できると考えた。本研究では、この二相界面に分布する光触媒微粒子の調製およびこれを使った二相系での光触媒反応であるベンゼンの酸化反応を行った。 さまざまな酸化チタン粉末を用いて、懸濁反応系での有機化合物の酸化反応をおこなったところ、メルク製、アナタース型の酸化チタンが比較的部分酸化生成物を多く生成したことから、これをモデル光触媒粉末として選択した。一般に、この酸化チタンのような酸化物粒子は表面水酸基が存在するため、親水的な表面をもっており、これらを水と有機化合物の二相系に加えると水相にだけ分散する。このような粉末をオクタデシルトリクロロシラン(ODS)のような長鎖アルキルをもったシリル化剤と反応させると疎水化し、有機相にのみ分数する粒子が得られた。表面を部分的に疎水化するため、このシリル化反応の前に少量の水を酸化チタン粉末に添加した。こうすると、粒子間に存在する水の毛管力によって、粒子が凝集して大きな二次粒子を形成する。この凝集二次粒子をODSの入った有機溶媒に入れると、粒子自体は親水的なので、凝集を保ったまま懸濁し、ODSは凝集粒子の外側とだけ反応するので、その結果、表面の一部分だけが疎水化された親水性、疎水性両方の表面をもつ異方性の酸化チタンが得られ、この粉末は期待どおり異相界面に集合した。 調整した修飾酸化チタンの光触媒活性について、水と酸素をつかったベンゼンの光水酸化反応で評価を行ったところ、界面に集合する異方性の酸化チタンあるいはベンゼン相に分散する疎水性の酸化チタンでは、系内を懸濁させず静置系で反応を行うと、選択的にフェノールを生成することがわかった。
|