研究概要 |
本研究の目的は,付着性の各種動物細胞を基板細孔部へ誘導・固定して細胞固定化基板を作製し,単一細胞レベルでの電気的特性評価および外部刺激に対する応答特性評価を行うことと,それら細胞機能を利用した新規な隔膜型バイオ素子を開発することである。 本年度の研究で,既に以下の結果を得ている。 (1)異方性エッチングによる細孔基板の作製 厚さ200μmのシリコンウェハー(100面配向)にたいして濃KOHによる異方性エッチングを施し,孔経10μm以下の細孔を作製することができた。 (2)細孔基板における細胞培養 作製した微細孔へ,ウシ大動脈内皮細胞やPC12神経様細胞を培養することに成功した。内皮細胞は微細孔部へ内皮様組織を形成した。神経細胞は,基板表面から裏面に軸策を成長させ,細孔間を短絡する性質を示した。基板表面にフィブロネクチンやポリリジンなどの細胞接着性タンパク質を予め吸着させておくことで3次元構造を有する基板にも細胞培養が可能となった。 (3)細孔部への細胞誘導及び接着固定 微細孔部にのみ細胞接着を誘導するためのパターン培養技術を開発した。ポリジメチルシロキサンによるマイクロスタンプを作成し,これを用いて細胞接着タンパク質を疎水化ガラス基板上にパターン転写した。子宮頚癌細胞(HeLa),ウシ大動脈内皮細胞,ニワトリ胚由来心筋細胞,PC12神経様細胞などを培養したところ,これらすべての細胞株が〜5μmの精度でパターン化された。微細孔基板への適用は来年度の課題である。
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