研究概要 |
プロトンやリチウム固溶機能を有する電池活物質の速度論的特性は,電池の充放電特性を考察する上で重要である。当該研究課題においては,電気化学的な固溶過程をマイクロ電極によるインピーダンス測定を行い,その結果を反映したモデル化に基づき解析することを目的とする。 測定対象とする電池活物質粒子(粒径7〜34μm)にマイクロ電極を接触させ,サイクリックボルタモグラム測定した後,電位規制下において電気化学インピーダンス(EIS)測定を試みた。本年度は,水酸化ニッケル系,ミッシュメタル合金系の水素吸蔵合金と,Li脱挿入カーボン粒子に焦点を絞る。 球形水酸化ニッケルおよびミッシュメタル合金について研究した結果,酸化還元,酸素発生および充放電容量の測定が可能であった。水素原子の吸脱着挙動を速度論的に検討した結果,水素吸脱着のEISは,理論予測されたそれと非常に似通った形状を呈した。等価回路は,(1)電荷移動反応,(2)水素の吸着-吸収転移,(3)低周波で観測されるメタルハイドライドの水素の内部スペースへの拡散を考慮した。固層における水素の拡散係数を求めた。 一方,メソカーボン微小粒子(MCMB)に対するリチウムイオンの脱挿入挙動を,電気化学インピーダンス測定により研究した。測定データは,(1)表面皮膜層(SEI)中のリチウムイオン伝導、(2)粒子/SEI,SEI/電解液界面の電荷移動,(3)固相内リチウム拡散に基づくワールブルグ要素,(4)充電に対応するインターカレーション容量過程より成る等価回路で解析を行った。この結果、固相内のリチウムイオン伝導は,電位に依存しないことが分かった。 以上のように,EIS測定を通して研究することで,電池活物質の充放電特性をダイレクトに研究できた。
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