研究代表者は太陽電池材料として期待されているCdTcの低コスト成膜技術として電析法を研究してきた。ここでは、Te(IV)種の溶解度が低い硫酸酸性浴にかわる電析浴としてアンモニアを含有する塩基性浴を開発し、電析時にカソード表面に可視光を照射することで電析速度が向上する光アシスト電析によってCdTe層を成膜している。本年度はまず、光アシスト電析によって得られたCdTe薄膜の光学特性を明らかにするため、反射スペクトルの測定を目的として積分球を研究費で購入した。CdTeのバンドギャップに相当する波長860nmに、反射スペクトルの明瞭な立ち上がりがみられたことから、電析CdTe薄膜はバルク単結晶と同等の優れた光学特性をもつことが明らかとなった。 透明導電性基板であるITO上に硫化カドミウムCdS層を電解析出させ、さらにCdTe層を電析させることで、p-n接合太陽電池の作製を試みた。as-depositedのITO/CdS/CdTe多層膜は光起電力を示さなかったが、熱処理後の多層膜は約0.35Vの開回路起電力を示した。起電力応答の照射光波長依存性も、CdTeのバンドギャップが1.43eV程度であることを示した。しかしながら、太陽電池の変換効率は非常に0.1%以下の非常に低い値であった。この主たる原因として、電析CdTe層の抵抗率が10^8Ωcmと半導体としては極めて高抵抗であることが考えられる。電解浴中に銅イオンを加えることで電析CdTe薄膜中に銅をドープし、キャリア濃度を高めて抵抗率を下げることが今後の課題といえる。なお、ホール効果の測定により、塩基性浴からの電析CdTeはp型の伝導特性を示すことが明らかとなった。as-depositedでp型の電析CdTeが得られた例は世界初である。
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