イオントラックが有機固体・凝縮相中に形成された場合、極めて高濃度に凝縮された化学反応活性種の「場」を形成し、化学反応の「常識」を覆す反応挙動を示すことが明らかとなりつつある。研究代表者はこのビーム特性を用いて、固体高分子内の飛程に沿った半径数nm〜数10nm程度の円柱状超微細構造体(ナノワイヤー)を形成することに成功した。これら基板上のナノワイヤーは、化学結合により、ケイ素基板上に強固に接着されている事が、本研究での直接観察法により明らかとなった。またこれらナノワイヤーは、ケイ素含有高分子ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリビニルシラン薄膜の微小空間内架橋反応により形成され、元となるポリシランの有する様々な物性を有することが期待される。本年度は、特に新たに開発されたポリカルボシランをベースとする高分子ゲル化ナノワイヤーの特性に着目し、加熱処理によってSiCナノワイヤーへ転化できる事を実証した。これらの結果は、超微細構造体の電界発光素子やエミッター、蛍光体などへの応用の可能性を示す重要な知見となる。
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