本研究では固体電解質の有するイオン伝導性を駆動力とした金属イオン注入法に関して、針状の固体電解質を用いて、固体材料への目的部分のみへの局部選択型ドーピング法について検討した。具体的には銀イオン伝導性固体電解質とアルカリ金属含有ガラスを固相接触させある程度の高温で電気を流すことにより電解質中の銀イオンをガラス材料の選択部分へ注入した。このときのイオン移動機構はガラスがアルカリ金属イオン伝導性を示すため、銀イオンがアルカリ金属イオンと置換的にドーピングされることがわかった。また、局部選択的イオン注入におけるドーパントのガラス内での分布径はイオン注入時の電流値や時間に依存し、温度には無関係であることがわかった。さらに、注入時に印加した電気量と実際のドーピング量を比較し、イオン注入の電流効率を評価すると、90%以上の高い効率でドーピングが進行することがわかった。このことは、本手法では電気量によりマイクロモルオーダーの極少ないドーパント量を制御可能であることを示唆している。アルカリ金属含有ガラスへの金属イオン注入ではあらゆる1価の金属イオンが容易に注入可能であったが、2価の金属イオンの注入は不可能であった。これは2価の金属イオンがガラス内酸化物イオン格子から大きな静電的反発力を受けるためであると考えられる。また、注入対象材料としてはガラス材料ばかりではなく、酸化物超伝導体などのセラミックス材料への局部選択的金属イオン注入も可能であることが明らかとなった。
|