CuS層を有するオキシ硫化物が透明性とドーピングによって制御可能なp型伝導性を併せ持つことを我々は以前見出した。さらに、そのオキシ硫化物中において光励起によりCuS層に室温エキシトンが生成することも初めて見出した。これらの電気的・光学的特性は、結晶構造中に存在するCuS層の二次元性に由来するものと考えている。本研究では、この予測を拡張して、結晶構造にCus一次元鎖を有する物質が、どのような電気的・光学的性質を示すかについて検討した。CuS一次元鎖を有する物質としてBaLaCuS_3を選択した。試料は、各単純硫化物を原料として、固相反応法により合成した。p型伝導性の発現を目的としたホール導入において、Ba欠損、BaのK置換、LaのBa・Sr置換を試みた。その結果、Ba欠損の導入においてのみ、試料にp型伝導性が発現し、その伝導性はBa欠損量はって制御可能であることが見出された。拡散反射率によって見積もったエネルギーギャップは約2.1eVであり、可視域全域において透明ではないものの、Cu(I)を含有する硫化物としては、比較的大きいバンドギャップであった。BaLaCuS_3におけるp型伝導性の発現およびBaLaCuS_3のワイドバンドギャップは、CuS四面体が頂点共有するCuS一次元鎖の低次元性に由来するものと考えられる。
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