研究概要 |
PbWO_4はPbの一部をLaで置換すると酸化物イオン伝導性が発現する.Laの置換にはPb_<1-x>La_xWO_<4+x/2>およびPb_<1-x>La_<2x/3>WO_4の2種類があり,前者は格子間酸化物イオンを,後者は陽イオン空孔を形成する.これらの物質はメカニカルアロイング(MA)法によっても調製可能であり,Pb_<1-x>La_<2x/3>WO_4系ではMA試料でも焼結体でも同様の粉末密度を示したものの,Pb_<1-x>La_xWO_<4+x/2>系ではMA法で調製した試料の粉末密度は焼結体のものよりも低いものであった.昨年度は焼結体の中性子回折実験を行い,格子間酸化物イオンの位置を決定するとともに,FT-IR,熱容量測定,誘電緩和測定等により,調製法の違いによる欠陥構造の相違について議論した.本年度はMA試料の中性子回折実験を行い占有率から欠陥構造を議論するとともに,同型のPbMoO_4系酸化物イオン伝導体についてもMA法によって調製できることを示し,粉末密度測定やFT-IRによって欠陥構造を議論した. Pb_<1-x>La_xWO_<4+x/2>系について中性子回折を行い,Rietveld法により各サイトの占有率を調べたところ,Pbサイトの占有率が他のサイトのものに比べて低下していた.EDXによる組成分析では出発組成からのずれはなく,PbやLaの偏析が見られないことから,Pbは単独あるいは酸化物として灰重石型の結晶格子付近にアモルファス的に広く分散している可能性があった.またWとMoは類似した性質を示すことから,PbMoO_4についても焼結法およびMA法でLaを置換した系を合成し,イオン伝導性や欠陥構造について調べた.その結果Mo酸塩でも焼結体では酸化物イオン伝導性が発現することが明らかになり,また粉末密度測定およりFT-IR測定から,焼結体およびMA試料のいずれもW酸塩の場合と同様の欠陥構造を示すことがわかった.
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