研究概要 |
界面活性剤の導入により有機溶媒に可溶化した酸化黒鉛へアセナフチレンを自己組織的に導入した層間化合物薄膜を作製し,これに紫外光を照射することにより微小空間に固定化されたアセナフチレンの二量化反応を行い以下のようなことを明らかにした. 1.長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩を含む試料の場合,層間化合物内に生じる空間は疎水的で、高濃度にアセナフチレン分子を導入できた.これにより分子間距置を接近させることができるため二量化反応は非常に速く進行した.さらに,反応終了後には大きな層間距離の変化が見られたことから、このアセナフチレンが導入された微小空間は剛直なゼオライトの細孔とは異なり比較的フレキシブルなものであると考えられた. 2.長鎖アルキルアミンを含む試料では,酸化黒鉛に対して空間の仕切となるアルキル鎖を高濃度にできるためトリメチルアンモニウム塩の場合に比べて層間に生じる空間をさらに小さくすることができた.このため.アルキル鎖あたりのアセナフチレン導入量は1以下で,トリメチルアンモニウム塩の場合に考えられたアセナフチレンの凝集は抑制されていると思われた。種々のアルキル鎖長のアミンを含む層間化合物中に種々の濃度のアセナフチレンを導入して二量化反応を行つた場合,アルキル鎖が短いものほど励起分子の拡散が困難で,また,アセナフチレン導入量が多いほど一重項励起状態からの生成物であるsyn体の割合を増加させることができた.
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