光合成アンテナモデルを設計・作製するため、メソポーラスシリカFSMの細孔内にクロロフィルを導入した。クロロフィルは非常に変性しやすい色素であるが、FSM表面をジオールで修飾することにより、色素の変性を抑制できることを明らかにした。つぎに、細孔内に二種類の色素(ドナーおよびアクセプター)を導入し、色素間のエネルギー移動を蛍光測定により観察した。少量のクロロフィルを細孔内に導入した場合にもエネルギー移動が見られたことから、色素が細孔内で適度に濃縮されていることが分かった。このエネルギー移動効率を見積もったところ、ドナー/アクセプター=1/10の場合に約75%であった。 しかし、液相吸着による色素の導入では、細孔内における色素の配向や分散状態を制御することは難しい。そこで、細孔の中心部に色素を配置させるために、側鎖にトリエトキシシリル基を有するクロロフィル誘導体を新たに合成した。二種類のクロロフィル誘導体をFSMにグラフトし、エネルギー移動挙動を観察したところ、その効率はドナー/アクセプター=1/2の場合に80%以上にもなることが分かった。このことは、色素が細孔の中心部に配置されることによりエネルギー移動が起こりやすくなったことを示唆している。 さらに、クロロフィルを界面活性剤中に包括させたメソ構造体薄膜を用いて同様の実験をおこなった場合にも、粉末状のメソポーラスシリカ中と同様にエネルギー移動が起こることも分かった。このようなエネルギー移動移動挙動はシリカ層厚の異なる薄膜を作製した場合にも認められたことから、メソ構造体薄膜がエネルギー伝達場として適していることが分かった。
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