本研究は、高機能ナノデバイスや単一分子情報システムの構築に向けて、分子性ネットワークの設計手法の確立を目指してきた。初めに、表面ゾルゲル法により固体表面に吸着した有機分子をチタンアルコキシドで架橋化し、その構造を種々の表面解析手法により検討した。また、Na_2SiO_3の水中での架橋反応を検討し、1本のポリマー鎖が1枚のシリケートシートで覆われたナノケーブルの作製に成功した。このケーブルの直径は、約2.5nmであり、長さは用いた高分子の分子長に対応することが、電子顕微鏡より確認された。後者のMolecular Wrappingの研究は、個別の分子機能を孤立させる手法として、幅広く展開した。蛍光色素をチタニア超薄膜でラッピングすることで、高濃度でも濃度消光されにくいナノ粒子が作製された。個々の水溶性タンパク質の回りにシリケート超薄膜を作製する技術も開発された。生体高分子のラッピングは、水溶性の糖鎖にも適用できることが明らかとなり、これを用いて、タンパク質と糖鎖との相互作用部位の検証に用いられた。以上の研究成果は、我が国の権威あるレビュー誌であるThe Chemical Recordに掲載された。 本研究は、「金属アルコキシドの低次元架橋」から「金属/酸素結合のトポロジー制御」へと展開し、有機分子や高分子を含んだナノスケールの酸化物組織体の構築へと急速に展開しつつある。特に、ランタノイドイオンのオーレーションの制御による固体表面でのナノ薄膜の構造制御、水溶液中での酸化物ナノワイヤーの形成などでは新しい技術が見つかりつつある。これらの結果は、新たに「酸化物ナノ組織体」の研究へと引き継がれることが強く期待される。
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