研究概要 |
'フッ素-水素'水素結合による新規液晶性物理ゲルの開発 有機フッ素化合物の水素結合性は,近年,計算化学および錯体化学の分野で注目されている.この水素結合性を新しい材料の設計に適用することを目的とし,フルオロフェノール部位を有するパラトリフェニレンを合成した.この化合物は,有機溶媒中で'フッ素-水素'水素結合を介して自己集合し,溶媒をゲル化する,物理ゲル化剤となることがわかった.ゲル化能を調べたところ,ヘキサンなどの脂肪族炭化水素,クロロホルム・ジクロロメタンのようなハロゲン化炭素,およびベンゼン・トルエンのような芳香族炭化水素をゲル化することがわかった.SEM測定によりゲル化の要因となる集合体の観察を行ったところ,繊維状の組織体が形成されていることがわかった.類縁体のX線単結晶構造解析により,この自己組織体の形成は,リボン状の水素結合ネットワークの形成によるものであることがわかった.さまざまな類縁体を合成し,ゲル化能を評価したところ,2, 3-ジフルオロフェノール誘導体のみが物理ゲル化剤となることがわかった.また,シクロヘキサン環を有する誘導体は,ネマチック液晶性を示した.この化合物の単結晶構造解析をおこなったところ,'フッ素-水素'水素結合を介した二量体型構造を形成していることがわかった.リボン状の水素結合パターンではゲル化能が発現し,二量体型のパターンではネマチック液晶性が発現するという現象を見出した.異なる二種類の水素結合パターンの制御により異なる材料特性が発現される新規材料の開発につながるものである.
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