研究概要 |
光学活性な生体関連金属錯体として、骨格に7つの不斉炭素を有する天然のビタミンB12誘導体を基本骨格として用い、様々な側鎖置換基を有する疎水性ビタミンB12錯体を合成した。いずれも高収率で合成することが出来、電子スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、質量分析スペクトル、電子スピン共鳴スペクトルおよび元素分析で同定した。この錯体は各種有機溶媒に対して高い溶解性を示し、均一系触媒として優れた性質が期待できた。またこの錯体の酸化還元挙動をサイクリックボルタンメトリー法により検討したところ、窒素雰囲気下、N, N-ジメチルホルムアミド中で、Co(II)/Co(I)の酸化還元電位が-0.7V vs. Ag/AgClに観測され、有機電解触媒として使用できることが明らかとなった。また基質としてラセミ体の2-ブロモエチルベンゼンを加えたところ、新たにコバルト一炭素結合を有するアルキル錯体の1電子還元波に由来する不可逆波が観測され、基質であるハロゲン化アルキルが、アルキル錯体を経由して活性化されることが明らかとなった。さらに二酸化炭素を通気しながら測定すると、触媒電流の増加がみとめられた。すなわちこれらの現象は、電気化学的に活性化された疎水性ビタミンB12錯体のCo(I)種が、求核的に基質である2-ブロモエチルベンゼンと反応してアルキル錯体を与え、その開裂によって生じたカルバニオンが二酸化炭素と反応していることを示唆している。
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