本年度は、まず電子移動メデイエーター(Med)固定化担体の作製ならびに調製について検討を行った。Medは、種々の基質に対する電解触媒反応に用いられている有機ニトロキシルラジカル、フェロセン、Niサイクラム、ビオローゲン等を使用し、担体の基材にはグラファイトフェルト、シリカゲル、イオン交換樹脂、両親媒性高分子樹脂等を用いた。Medの担体への固定方法は、物理吸着法および化学結合法により行った。物理吸着法では、Medと担体としてシリカゲルをアセトン等の溶媒中で攪拌した後、溶媒を留去することによりMedを担体の細孔内および表面に担持させた。この調製されたMed担持シリカゲルの水中での安定性ならびに特性を、電気化学的手法であるサイクリックボルタンメトリーを用いて評価した。その結果、このMed担持シリカゲルは水中に攪拌下存在させてもシリカゲルからMedが溶解せず安定に担持されていることが分かった。さらに、いずれのMed担持シリカゲルも可逆的な酸化還元波が得られたことから、シリカゲルに担持されたMed-電極間の電子移動が円滑に進行していることが示唆された。一方、化学結合法では担体の細孔内あるいは表面にカルボキシル基あるいはアミノ基等の官能基を持たせ、Medとエステルあるいはアミド結合等の化学結合により固定化を行った。このMed修飾担体もサイクリックボルタンメトリーにより、水中に攪拌下存在させても担体からMedが溶解せず安定に担持されているとともに、担体に固定化されたMed-電極間の電子移動が円滑に進行していることが分かった。しかしながら、より効率的なMed-電極間の電子移動を行わせるためには、担体へのMed固定化量、Med-担体間の固定化距離等より詳細な検討を行う必要があり現在検討中である。
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