研究概要 |
本年度は、前年度の研究で得られた亜鉛ポルフィリン環状三量体・単層カーボンナノチューブ複合体と思われるフラクションについて、STMによる検討を行った。グラファイト基盤上にサンプル溶液を滴下して調整した資料において、太さ5nm程度の一次元状構造が観測された。一方、亜鉛ポルフィリン本来の吸収波長で、得られた成分を励起した場合、亜鉛ポルフィリンの蛍光はほとんど消光されないことが分かった。 次に、比較のため、フラーレンダイマー/金属ポルフィリン環状オリゴマー複合体の調整について検討した。その結果、アキシャル基としてメチル基を有するロジウムポルフィリン環状二量体とC_<60>二量体(C_<120>)が両者の混合比により1:1及び2:1の複合体を形成することを、溶液のESI-MS測定により見出した。興味深いことに、1:1複合体において、C_<120>はポルフィリンダイマーの空孔内で振動運動を起こすことが複合体の^1H NMRの温度依存性より明らかになった。フラーレンとの相互作用の異なる三種の芳香族溶媒(トルエン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン)中の振動周波数を比較したところ、フラーレンとの相互作用の強い(溶解度の大きな)溶媒中ほど振動周波数が小さいことが分かった。これは振動にはフラーレンの脱溶媒和が必要であるためと考えられ、熱力学的な解析から得られた振動の活性化エントロピーが正であることも、この説明を裏付けるものである。
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