研究概要 |
まず、Pd(OAc)_2/PPh_3/In(OTf)_3からなる複合系触媒を用いてアリールエテンの二量化反応における基質の適用範囲について調べた。申請時においては、スチレン・4-クロロスチレン・4-トリフルオロメチルスチレン・2-ビニルナフタレンが収率よく二量化することがわかっていたが、さらに4-メチルスチレン・4-クロロメチルスチレン・4-ブロモスチレンも二量化体を与えることがわかった。二量化体の収率はそれぞれ85%、73%、70%であった。この反応は官能基選択性が高いことが特長で、一般にPd(0)価錯体に酸化的付加しやすい炭素-ハロゲン結合を持つ基質でも問題なく反応が進行する。アリールエテンの分子間二量化反応が収率よく進行することがわかったので、分子内反応についても検討した。具体的にはアリールエテンの分子間二量化反応において効果的であったPd(OAc)_2/PPh_3/In(OTf)_3を触媒として用いてσジビニルベンゼンをアセトニトリル中80℃で6時間反応させたところ、期待通り環化生成物である3-メチルインゲンが収率73%で得られた。σジビニルベンゼンの環化反応はIn(OTf)_3触媒単独では全く進行しなかった。さらにスチレンの二量化を一酸化炭素雰囲気下(1 atm)で行うと、一酸化炭素の挿入を伴ってスチレンが二量化し、(E)-1,5-ジフェニル-1-ペンテン-3-オンと(E)-1,4-ジフェニル-1-ペンテン-3-オンが構造異性体の混合物として収率44%で得られた。一酸化炭素の挿入を伴うアリールエテンの二量化はカチオン性パラジウム錯体を触媒に用いても進行するが、その場合一酸化炭素加圧条件が必要である。これに対しPd(OAc)_2/PPh_3/In(OTf)_3複合触媒を用いれば一酸化炭素加圧の条件は必要なく、常圧条件下で反応を進行させることができる。 現在、Pd(OAc)_2/PPh_3/In(OTf)_3複合触媒を用いてアルデヒド・イミンを求電子剤に用いるアルケンの付加反応を検討中である。
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