これまでに報告されたカプセル分子は、その結合方式から主に"共有結合型"と水素結合や金属の配位結合を利用した"非共有結合型"の2種類に分類される。本法ではこれら2種類の結合方式の短所を補ったカプセル分子を構築することを目的とする。まずロタキサンを用いた非共有結合型のカプセル分子により3次元空孔を構築し、次にゲスト分子を取り込み、最後にストッパーによりカプセル分子の構造を固定化するという3段階で実験行う。 まず、初年度は一段階目である擬ロタキサンの構築について検討した。ところで、カリックスアレーンは様々な置換基を容易に導入できる骨格分子として有用である。そこで、骨格分子として大環状化合物であるカリックス[4]アレーンを用いた。化合物1は輪となる部位を2つ持ち、一方化合物2は軸となる部位を2つ有する。化合物1と2を等モル有機溶媒中で混合すると、軸部位は水素結合により輪部位に取り込まれ、擬ロタキサン構造が形成された。このことは、^1H-NMRスペクトル及びマススペクトルにより確認した。まず、^1H-NMRスペクトルにより軸部位および輪部位の大きなケミカルシフトが観測され、輪部位の中に軸部位が貫通していることが示唆された。また、マススペクトルにより、化合物1と2からなる錯体に相当する分子量のピークが観測された。今後、ゲスト分子の取り込み能、およびストッパー分子によるロタキサン構造の固定化を行う予定である。
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