これまでに報告されたカプセル分子は、その結合方式から主に"共有結合型"と水素結合や金属の配位結合を利用した"非共有結合型"の2種類に分類される。本法ではこれら2種類の結合方式の短所を補ったカプセル分子を構築することを目的とする。まずロタキサンを用いた非共有結合型のカプセル分子により3次元空孔を構築し、次にゲスト分子を取り込み、最後にストッパーによりカプセル分子の構造を固定化するという3段階で実験行う。この手法の大きな特徴は、擬ロタキサン構造が可逆であるため、カプセル分子を構築後、ゲスト分子を取り込むことが可能となる。さらにストッパーによりロタキサン構造に固定化した後も、空孔の構造が大きく変化しないため、ゲスト分子の錯化力が大きく変化しないという利点がある。以上のように、本法は超分子錯体を固定化することにより、ゲスト分子を孤立化させることを可能とする初めての手法である。 水素結合を利用したvegtleらのロタキサン化合物では会合定数が低いため、カプセル構造を保持したままストッパーを導入することができなかった。そこで、輪状部位としてクラウンエーテル、軸部位としてアンモニウム部位を有するカリックスアレーン誘導体をそれぞれ用いることにした。輪となる部位を2つ持つ化合物1と、軸となる部位を2つ有する化合物2の合成に成功した。現在は合成までであるが、今後化合物1と2を等モル有機溶媒中で混合すると、軸部位はクラウンエーテルに包接される形となり取り込まれ、擬ロタキサン構造を形成するものと予測される。今後、^1H-NMRスペクトルによりその構造を明らかとする。また、嵩高い置換基を有するストッパーを導入することによりカプセル分子の固定化を行う。
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