近年、粒径、粒子形状、および表面特性を制御した高分子微粒子を高付加価値材料に応用する研究が盛んに行われている。我々が開発した活性エステル基含有モノマーであるメタクリル酸フェニルジメチルスルホニウムメチル硫酸塩(MAPDS)とスチレン(ST)とのソープフリー乳化共重合により、粒径が267nmの反応性高分子微粒子P(ST-co-MAPDS)が得られることを報告してきたが、最近になってP(ST-co-MAPDS)微粒子が金基板上で安定な自己組織化膜を形成することがわかった。 本研究では、はじめにP(ST-co-MAPDS)微粒子を用いた超粒子組織体を構築する主要な因子を検討した。SEMによる微粒子膜モルフォロジー観察から、微粒子膜構造は微粒子間の静電反発、微粒子と金基板との相互作用とのバランスに強く依存することを明らかにした。レドックス活性種としてフェロシアン化カリウムを用いたサイクリックボルタンメトリーにより、P(ST-co-MAPDS)微粒子の固定化に伴う電極の有効面積の減少量を測定したところ、高分子微粒子1個あたり5.60×10^4nm^2の付着面積を占めていることが明らかになった。また、フォトレジストを利用して調製したパターニング基板を用いることにより、高分子微粒子の選択的固定化が可能であることを示した。最後に、金基板上においてパターン状に高分子微粒子を固定化した後に、微粒子表面に残存する活性エステル基の利用した機能化の試みとして、末端にアミノ基を有するデンドリマーによるアミノ化反応を行った後、フルオレスカミンによる蛍光ラベル化反応を行った。蛍光顕微鏡観察により、金基板に固定化されたP(ST-co-MAPDS)微粒子表面からの蛍光発光が認められたことから、高分子微粒子の自己組織化膜を機能材料素子へ応用展開できることが示された。
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