1.複数の相互作用部位を持つモノマーとして、N-アクリロイルペプチド誘導体の合成を行った。まず塩化アクリロイルとアラニンの反応によりN-アクリロイルアラニン1を収率62%で得た。一方、フェニルアラニン、セリンおよびヒスチジンと過剰のn-プロピルアミンとのアミド化反応によってこれらのアミノ酸のn-プロピルアミド2を合成した(収率52-96%)。縮合剤を用いた1と2の縮合反応によりアラニルフェニルアラニンおよびアラニルセリン含有モノマーを得た。またヒスチジン含有モノマーについては、2と塩化アクリロイルとの反応により合成した。さらに塩化アクリロイルとグリシルグリシンとの反応により、カルボキシル基含有モノマーであるN-アクリロイルグリシルグリシンを合成した。 2.分子インプリンティングの鋳型として用いる遷移状態アナログ(TSA)については、酢酸p-ニトロフェニルの加水分解におけるTSAと考えられるメチルホスホン酸p-ニトロフェニルを合成した。 3.合成したモノマーを少量の架橋剤およびTSA存在下で重合させ低架橋度分子インプリント触媒を合成した。鋳型に基づく高次構造をポリマーに保持するためには低温での重合が望ましいことが予測されているので、低温ラジカル重合開始剤を用いた重合およびベンゾインイソプロピルエーテルを増感剤として用いた光増感重合について、室温において検討した。その結果、光増感重合においてのみ良好な分子インプリントゲルが得られることが明らかになった。 4.モノマーに対して20mol%の架橋剤存在下で合成した分子インプリント触媒を用いて酢酸p-ニトロフェニルの加水分解反応について検討を行った。その結果、分子インプリント触媒は無触媒系に比べて4.6倍、非インプリントゲル触媒系に比べて2.5倍高い活性を示し、複数の相互作用を利用した低架橋度分子インプリンティングによる触媒合成が実際に可能であることが明らかとなった。
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