科学研究費補助金交付申請書に記載したとおり、土壌懸濁液や活性汚泥をポリ(ビニルアルコール)(PVA)を基質として培養し、目的のアルドラーゼを分泌する細菌を培養することを試みた。PVAは生分解性を有するが、自然界には分解菌の絶対数が少なく、その分解速度は非常に遅い。よって、培養効率が低いことが予想された。まず、我々は、PVAの水酸基に部分的に糖質を直接グリコシド結合を介して導入することで、PVAの生分解性の促進を検討した。これが可能になれば、この高分子を培養基質(炭素源)として用いれば、効率よくアルドラーゼ活性を有するPVA分解菌が培養できると考えた。土壌懸濁液中での生分解性試験の結果、PVAの水酸基に約20%N-アセチル-D-グルコサミンをβ-O-グリコシド結合を介して導入することで、PVAの生分解性は約2倍速くなることがわかった。そこで、置換度0.13と0.20の糖置換PVAを炭素源に土壌懸濁液を27℃で5日間、集積培養を行った。得られた培養液を超音波、超遠心分離(科研費により購入)、および透析処理を行い、無細胞抽出物を得た。ゲル電気永動、サイズ排除クロマトグラフィー、赤外光度分光計による分析の結果、どちらの系からも90kDaのタンパク質が得られ、PVA分解菌の分子量と一致した。また、置換度の異なる糖置換PVAを用いても、同一の酵素が得られることがわかった。現在、この酵素のPVA分解活性およびアルドラーゼ活性を調べている。平成14年度は計画通り、アルドラーゼの逆反応を用いたPVAの酵素合成に挑戦する。
|