研究概要 |
1.酸化炭素-ギ酸-ホルムアルデヒド-メタノール変換活性をもつ脱水素酵素群の一部が活性部位に亜鉛を含有することに着目して、二酸化炭素からメタノールまでの多段階還元における亜鉛の効果を、非経験的量子化学計算を用いて解析すると、例えば、二酸化炭素からギ酸への還元過程においては、活性化エネルギーが無亜鉛系よりも15.8kcal/mol減少しており、亜鉛クラスターは、補酵素NADHから基質へのヒドリド転移を効果的に促進する傾向にあることがわかった。N原子やS原子が配位したテトラヘドラルな亜鉛の配位環境を合成化学的に再現するには、Parkinら(J. Am. Chem. Soc.,Vol. 122,p. 12651(2000).)あるいはGoldbergら(Chem. Commun.,p. 2396(2001).)等の報告があるものの、いずれも錯体構造の再現のみにとどまっており物質変換を行ってはいない。 2.二酸化炭素をメタノールまで還元するためには6つの電子が供給されなければならない。そこで、ナノサイズ化二酸化チタンを石英基板に多重積層させて固定化した光触媒薄膜と多電子運搬剤ビオローゲン誘導体を組み合わせた光誘起還元システムを構築した。積層数に対して比例的に光還元効率が高まることを確認し、4.5%の光電変換効率が得られた。また、繰り返し利用に対する積層膜の耐久性を調べた結果、光還元反応に十数回使用しても全く活性低下はみられなかった。 現在、合成亜鉛錯体を鋳型とした鋳型高分子触媒を設計するために、上記亜鉛錯体の導入あるいは金属亜鉛のドーピングならびにビオローゲン誘導体をテンプレートとした二酸化チタン鋳型高分子触媒をゾルーゲル法により作製しており、物質変換に関わる濃縮効果や配向制御効果の調査を予定している。
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