研究概要 |
前年度は、ナノサイズ化二酸化チタンを石英基板に固定化した光触媒薄膜と多電子運搬剤ビオローゲン誘導体を組合せた光合成模倣型光誘起還元システムを構築して4.5%の光電変換効率が得られるとともに、十数回の繰り返し利用にも耐え得ることを明らかにした。今年度は、分子インプリンティング効果とメソポーラス効果を調査することを中心に以下の項目を検討した。すなわち、高価かつ工業的な条件での取り扱いおよび繰り返し利用が難しい(不安定な)、2電子運搬剤の補酵素ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを使用する代わりに、安価で安定な多電子運搬剤としてのメチルビオローゲン誘導体を、ゾルーゲル法で作製する二酸化チタン系無機高分子で包み込んだ粒径300nm前後の鋳型高分子光触媒を作製した。このとき、ビオローゲンの末端をチタニウムエステル化させておくことで、アルカリ条件下でのテンプレート分子の除去が可能となった。一方、グリセロールと2-プロパノールを共存させたゾルーゲル法により、メソポーラスな二酸化チタンを作製し、セラミックマッフル炉を使用して焼成した試料の透過型電子顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察、ならびにBET測定により、巨視的な構造解析を行った結果、直径2ミクロンの球状微粒子が形成されており、比表面積50m^2/g,細孔径3nmの多孔質体であることがわかった。これらの二酸化チタン系無機高分子の二酸化炭素-ギ酸-ホルムアルデヒド-メタノール変換活性に関して、酵素様の分子インプリンティング効果とメソポーラス効果発現のための作製条件の至適化はまだ検討中であり、とりわけ、二酸化チタンの水素還元による表面活性化を高めるための白金担持と、反応液中の炭酸イオン配位濃縮のための亜鉛担持を調査しており、現在までのところ白金担持による還元効率の顕著な増加を確認することができた。
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