非晶性の主鎖に結晶性の側鎖が結合したグラフト共重合体において、主鎖の運動性、すなわちガラス転移温度(Tg)からの距離が側鎖の結晶化に及ぼす影響について明らかにするために、ポリスチレンを主鎖でポリエチレングリコールが側鎖であるグラフト共重合体PS-g-PEG、ポリヘキシルメタクリレートが主鎖でPEGが側鎖であるPHMA-g-PEGをそれぞれ取り上げた。PEGとPSあるいはPHMAは非相溶系であり、PEGの結晶化はミクロ相分離した側鎖ドメイン中で起こると考えられる。また、PS-g-PEGでは側鎖PEGの結晶化温度は主鎖PSのTgよりも低いのに対して、PHMA-g-PEGではPEGの結晶化温度の方が主鎖のTgよりも高いという点が異なる。 PEG鎖末端に二重結合を持つマクロモノマーを用いてラジカル共重合を行い、所定の側鎖組成を持つグラフト共重合体を得た。この試料の広角および小角X線散乱測定を行った結果を、以前に行った、主鎖をポリメチルアクリレート(PMA)、側鎖をPEGとする相溶系のグラフト共重合体PMA-g-PEGで得られている結果と比較したところ、以下のことが明らかになった。(1)PEGの重量分率が50%以下の場合、非相溶系のPHMA-g-PEGの方が相溶系のPMA-g-PEGよりも結晶化度が高かった。(2)PEG分率40%のPS-g-PEGではPEGの結晶化度は1%程度であった。以上のことから、ミクロ相分離の結果側鎖が結晶化しやすくなること、ならびに主鎖のTgが高いと側鎖の結晶化が大きく阻害されることがわかった。
|