・ブルースター角顕微鏡(BAM)の作製 本研究では、フッ化炭素鎖の傾き方位角(分子鎖配向)と摩擦力の関係を検討するのが主目的である。このために単分子膜内の分子鎖配向を見積る手段として、購入設備であるHe-NeレーザーおよびCCDカメラ等を用いてブリュースター角顕微鏡を自作した。既に分子傾き角等の異方性について報告例のあるモノアルキルグリセロールについて試験的な観測を行い、厚さ数nmの超薄膜について分子傾き角の違いを明瞭に観察できることを確認した。 ・末端フッ素化モノアルキルグリセロール(FMAG)の合成 モノアルキルグリセロールの末端が部分的にフッ素化された化合物(FMAG)は市販されていない。そのため、市販されている部分フッ素化された長鎖アルコールあるいはカルボン酸を出発物質としてそれらとグリセロールのエステルであるFMAGの合成を計画した。しかしながら、このFMAGは水との反応性が高く、水表面上で容易に加水分解する。そのため、部分フッ素化されたアルキル基とグリセロールのエーテルの合成へと方向転換を行った。 ・フッ化炭素鎖を側鎖に有するアクリレート系高分子単分子膜の構造と摩擦カ FMAGの合成が完了しなかったため、フッ化炭素鎖の構造と摩擦の関係について以前に申請者が合成したフッ化炭素鎖を側鎖に有するアクリレート系高分子の累積膜をもちいて検討した。シリコン基板上に一層累積した高分子LB膜中のフッ化炭素鎖の傾き角は、熱処理や湿潤処理により累積後に可変であった。後処理によりフッ化炭素鎖の傾き角を変えた累積膜の摩擦力は、傾き角の増加と共に上昇した。この結果を、単分子膜の粘弾性変形に基づくエネルギー散逸の見地から只今解析中である。
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