FETD単分子膜のブルースター角顕微鏡(BAM)および原子間力顕微鏡(AFM)による観察 モノアルキルグリセロールエーテル(ETD)およびフッ素化モノアルキルグリセロールエーテル(FETD)の単分子膜を調整し、BAM観察した。ETD単分子膜において、巨視的な配向構造に由来した構造が観測されたのに対して、分子鎖間の相互作用が小さいFETDの単分子膜では、BAMの解像度において認識できるサイズの凝集相は観察されなかった。ただし、FETD単分子膜を基板に累積後、AFMにより観察すると、数マイクロメートルサイズの微小な集合体が形成していることを明らかにした。 FETD累積膜の水平力顕微鏡(LFM)測定 ETDおよびFETDの単分子膜をラングミュア・ブロジェット法により固体基板上に累積し、LFM測定を行った。LFM像を解析したところ、FETDの単分子膜において微小負荷領域では、負荷の増大に伴って摩擦力が低下した後、それ以上の負荷に対しては線形に摩擦力が増大するという特異な現象を再現性よく観測した。この現象は、ETDやフッ化炭素鎖を有するモノカルボン酸においては認められなかった。つまり、鎖間相互作用が小さなフッ化炭素の疎水鎖をもち、かつジオール基のように大きな親水部を有する分子の超薄膜にのみ認められる現象であった。 ETDおよびFETD累積膜の摩擦力異方性評価 モノアルキルグリセロールエステルと同様に、ETDおよびFETDの単分子膜においても運動方向に依存して摩擦力が変化する摩擦力異方性が観察された。っまり、分子鎖間の相互作用が小さな場合であっても、鎖状分子が配向した集合構造をとっていれば摩擦力異方性が生じることを示した。 以上の結果を考察し、プローブチップが引き起こす水平方向の微小変形のうち、塑性変形に依存したエネルギー散逸過程が分子鎖集合体表面の摩擦力及びその異方性に重要であると結論した。
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