本研究では、凝集相としてnylon12、溶融相としてpolytetramethyleneoxide(PTMO)からなるpoly(ether-block0amide)(PEBA)を用い、応力測定と赤外二色性測定を行うことにより、その変形機構の解明を試みる。本実験では、赤外二色性測定のみならず、吸光度の測定を行い試料の試料の配向性を求める。そのためには、試料の厚みを評価する必要がある。これまでに行われてきた試料の評価法のほとんどは、体積一定の仮定のもとアフィン変形されるとされてきたが、実際、測定する試料の位置を一点に決定し測定を行ったところ、厚みおよび幅の変化は指数減衰曲線を描くことが明らかになった。これは、たとえネック延伸をしない場合にせよ、試料全体が均一には延伸されてないことを意味している。 試料の凝集相内に存在する水素結合性のamide-A基の赤外二色性から配向挙動を測定したところ、延伸に伴い延伸方向と平行方向に配向することが明らかになった。また、その配向挙動には、測定温度範囲内で温度依存性がなかった。これは分子間の強い水素結合による安定性に由来するものと考えられる。amid-IIとその倍音についても、amide-Aと同様の配向挙動を示した。メチレン基の対称および逆対称伸縮振動から、メチレン鎖もまた、延伸に伴い延伸方向と平行方向に配向することがわかり、溶融相内のメチレン基の配向が確認された。その配向度は温度の上昇とともに低下した。応力緩和挙動は、10-20minと1-4minの緩和時間をもつ二成分の指数減衰曲線で表されることがわかった。一方で、赤外二色性には緩和挙動が観察されなかった。2つの力学緩和モードの帰属は今後の課題である。
|