熱可塑性エラストマーはソフトドメインとハードドメインから形成されており、このため固体状態における弾性的性質と加熱による成型加工性を持つ。その成分比やモルフォロジーは、最終生成物の物性の制御に影響を与えることが知られている。本研究では、その変形機構の関係を解明するために、赤外二色性と応力の同時測定を行うことができる装置を用いて、ソフトドメインおよびハードドメインそれぞれにおける分子配向挙動を調べた。試料として、poly(ether-block-amide)を用いた。この試料では、ポリエーテル相がソフトセグメントに、ポリアミド相がハードセグメントとなる。試料の組成比・測定温度・調製方法の違いによって、異なる配向特性を示すことがわかった。ソフトセグメントについては、いずれの試料についても、局所的配向度λ_<Meso>が3以下の範囲でアフィン変形をすることが明らかとなった。ソフトセグメントの分子配向は延伸挙動と一致し、温度の上昇やポリアミド含率の低下に伴い、同じひずみに対する応力が低下し、同時に配向度の低下が生じた。一方、ハードセグメントにおいては、その含率や試料の調製法により、そのモルフォロジーが変化し、それに伴って、配向挙動に大きな違いが現れることが明らかとなった。特に、溶液キャスト法によりフィルムを作成した場合には、フィルム形成過程における分子の運動性がよいためにハードセグメントは大きなドメイン・異方性をもったモルフォロジーをとり、その長軸が延伸に伴い配向し、結果として、長軸に対して垂直方向に配向している分子軸が延伸軸に対して垂直配向する。一方、加熱溶融プレス法において作成されたフィルムは、そのモルフォロジーに分布が生じ、平均として分子軸は延伸軸と平行方向に配向をする。このように、試料延伸・配向特性は、ハードドメインのモルフォロジーに大きく影響されることが明らかとなった。
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