研究概要 |
スクラムジェットエンジンは次世代極超音速航空機やスペースプレーン用エンジンとして有望視されているが,燃焼器内部が超音速流れであるため,燃焼器内部での確実な着火・保炎が重要な課題としてあげられる.これまでの研究から,燃焼器内部においては衝撃波と燃焼現象が複雑に相互作用を及ぼし,4つの燃焼形態を示すことが分かっている.本研究においては,燃焼器内部での4つの燃焼形態に対して壁面熱流束を測定することにより,各燃焼形態での壁面熱負荷のデータを取得するとともに,燃焼器内部の流れ場を推定することを目的としている.平成13年度においては,薄膜形熱電対に類似した構造を持つ熱流束計を作成し,これをステップを有する矩形断面の燃焼器に68点取り付けて計測を行った.また,同時に3次元数値シミュレーションを行い実験結果と比較することで,流れ場の特徴を調べた.その結果,燃焼器内に衝撃波の発生しない,いわゆる「弱燃焼モード」においては,壁面熱流束の高い領域は燃焼器センターライン付近に流れ方向に広がって分布することが分かった.これは,反応速度が遅く燃焼完了に時間がかかっているためであり,このとき壁面熱流束は燃料噴流の挙動に影響されていることが分かった.一方,ステップ付近に強い衝撃波が発生する,いわゆる「強燃焼モード」においては,ステップの近くの側壁付近に,熱流束のきわめて高い領域が観測された.このことは,衝撃波の発生に伴って,ステップ近傍に大きな再循環領域が形成され,これが保炎領域として機能していることを示している.また,このため,強燃焼モードにおいては,壁面熱流束は燃料噴流よりも衝撃波の挙動に大きく影響を受ける.これらの結果は,学会誌に投稿し掲載予定である.
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