研究概要 |
本研究は,テザーに連結された球を母船搭載マニピュレータで投げるキャスティング法を用いて,球を故障人工衛星に衝突させることにより姿勢制御を行う手法を,ソフトウエアシミュレーションにより評価することを目的としている.具体的には,汎用機構解析ソフトウエアADAMSを用いた挙動解析・制御手法評価を行う.まず,母船搭載マニピュレータ・故障人工衛星・テザー連結球のモデリングを行った.基本的にADAMSは,剛体要素の拘束・作用力関係を用いて連結するモデリングである.ここではテザーを無質量と仮定し,伸縮・たわみを無視することとし,母船搭載マニピュレータ手先と球の間に張力のみ作用するモデルとした.また,故障人工衛星とテザー連結球は衝突が発生するモデリングを行った.次に,キャスティングにおけるテザー連結機器の移動軌道修正制御法を,ADAMSに設定した.とくに,テザー連結球の故障衛星衝突時の状態(位置・速度)を目標状態とできるように改良してある.そして,シミュレーションを実施し,キャスティングの有効性を検証・評価した. 一方で,テザーの質量・伸縮・たわみを考慮した基礎的な伸展・回収シミュレーションを,ADAMSを用いて行った.このシミュレーションでは,ザーを要素分割した剛体により表現し,伸展・回収は鉛直方向のある高さの一点において,テザーを横方向に拘束することにより表現した.また,テザー先端球は多剛体系とし,球の姿勢制御を行うことにより伸展・回収中にテザーが絡まるなどの危険性を回避する制御を用いている.シミュレーション結果より,テザー先端球の姿勢制御が有効であること,重力の影響が小さくなるにつれて(微小重力環境),テザーの振り子モード以外の振動成分が現れることが確認された.これは,重力による安定性が低下するためである.
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