研究概要 |
当初対象海域として博多湾を想定していたが、博多湾にはフロントを発達させる大河川の流入がないこと、有明海においては定期航路上から漂流物の集積がしばしば観察されることなどから、対象海域を有明海島原半島北東(北緯32度50分〜33度00分,東経130度10分〜130度30分付近)に変更し、平成13年7月,10月及び14年1月にCTD観測及び観測船からの潮目の観測(位置の記録、漂流物の回収)を行なった。また、長崎・熊本両県営自動車航送船組合のご好意により、多比良〜長洲間定期航路上で潮目の目視観測を実施していただいた。 まず、定期航路からの目視観測により、対象海域における各季節の潮目発生の概況についてまとめた。各季節1ヶ月分の潮目の報告を多比良港からの距離で分類して頻度を求めたところ、多比良沖および長洲沖約1〜2海里の箇所に強い極大があった。季節によらず海岸近くのほぼ同じ位置に頻度の極大が現れることから、これらの潮目は海底の振動流境界層が岸近くで海面に達することによって生ずる筋目であると考えられる。 次に、CTD観測結果と観測船・定期航路からの潮目観測結果とあわせて考察を行なった。7月の観測においては、海域中央部の潮目に対応して海面付近の高温・低塩分層の厚さが変化している様子がとらえられた。一方、10月の観測においては、湾奥および諫早湾よりもたらされたと思われる低塩分水塊が島原半島沿いの海面近くに分布している様子がとらえられたが、有明プロジェクト(代表:小松利光九州大学教授、筆者も参加)第1回観測においても同様の塩分分布が得られており、また、定期航路からの目視観測においても航路中間地点付近で潮目報告数の弱い極大があらわれているため、比較的安定して存在するフロントとそれに対応した潮目をとらえられたのではないかと考えられる。これについてはさらに考察をすすめる予定である。
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