研究概要 |
本研究ではCFD(数値流体力学)によるシミュレーションを行い,造船所の船殻加工・組立工場において工作時に溶接・切断により発生したヒュームの拡散状態を把握して,高効率の換気システムの設計に応用することを目的としている。本年度は以下のような研究成果が得られた。 (a)ヒュームの物理特性に関する公表された資料を収集してヒューム粒子の化学成分,幾何形状,サイズなどを調査した。その結果,造船所の場合は鋼板の切断や溶接作業時に発生する金属ヒュームはサイズ0.1〜10μm程度の不定形の粒子となるが,その中に肺に堆積し健康被害を及ぼす恐れがあるのは0,5〜5μmの極微細粒子で,換気流や熱対流による拡散・移流性が高く,その移動性状の把握は低濃度の場合は気相流として扱えることが分かった。 (b)造船場内業工場内における労働安全上強く問題視される極微細粒子の拡散現象を数値解析する差分法計算プログラムを作成した。数値解析対象は非定常三次元乱流熱流体で,ヒュームは気相として扱い,相間の運動量やエネルギーの厳密な交換は考慮しない2流体モデルを用い,乱流モデルはk一εモデルを使用した。この計算法によって,自動切断機力稼動中のある内業工場において天井部の換気ファン駆動の他にブロック搬送ドアの開閉と工場側壁の窓を開放した場合について換気流の数値シミュレーションを行い,換気効率について調べた。 なお,溶接機・切断機近傍のヒュームの詳細な流動様相の解明については,ヒューム粒子に関するLagrange形の粒子運動方程式を解く必要があり,DynamicSGSモデルを応用する固気混相乱流の数値解析方法に関する研究は来年度以降に行う予定である。
|