研究概要 |
本年度は,アサイスミックき裂で生じている物理現象の垂直応力依存性とせん断滑り速度依存性とについて,AE発生率ならびにm値を用いて具体的に検討し,地下のアサイスミックき裂でのAE発生挙動について考察した。 (A)き裂面から発生するAEの発生レート,m値の垂直応力依存性 高剛性の試験機を使用し変位制御によりSlide-Hold-Slide(定速度滑り-滑りを停止の後に一定時間保持-定速度滑り)試験を行った。既存き裂面に作用する垂直応力成分の大きさを変化させて,封圧が10から20MPaの環境下でせん断滑りの際に発生するAEを計測し,AE発生率(100〜500kHzの帯域で単位滑り量あたりのAE発生数)ならびにAE振幅のm値の変化を検討した。その結果,AE発生率とm値はき裂面に作用する垂直応力成分に依存しないことが分かった。本現象は,垂直応力が増加しても,き裂表面間の接触点数と接触面積に大きな変化がないためであると考えられる。 (B)き裂面から発生するAEの発生レート,m値の滑り速度依存性 同様の試験システムを用いて,せん断滑り速度を制御しながらその際に発生するAEを計測し,AE発生率ならびにm値の変化を検討した。その結果,AE発生率とm値はき裂面に作用するせん断滑り速度が増加すると,共に減少することが示された。追実験をする必要があるものの,このことは水圧破砕によりき裂内への流体流入度とともに間隙水圧上昇度が大きく,せん断滑り速度が比較的速いと考えられる既存き裂の場合,AEの発生率は低く,また相対的に振幅の大きなイベントが発生することを意味していると考えられる。 本研究で得られた成果は,地震学会ならびにスタンフォード地熱貯留層工学研究会で発表した。
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