本研究は、水圧破砕き裂の力学的挙動の分析ならびにき裂内流体の岩盤内への浸透現象の分析にX線CTを用いる点にある。すなわち、これまでボアホール壁面でのみ直接計測が可能であったき裂の力学的挙動、形状、き裂内流体の浸透の定量的評価を、対象領域全体に渡って分析することが可能になる点に大きな特徴がある。 本年度は、「き裂内流体浸透現象の可視化」および「水圧破砕き裂の力学的挙動計測試験」を計画通りに実施した。 その成果として、比較的ポーラスな岩石内部への流体の浸透量と浸透の分布をX線CTにより可視化した。また、X線CTデータにより透水係数の定量的評価を行うとともに、透水特性の流入圧依存性について分析を行った。また、本年度は空隙の少ない岩盤での透水現象の可視化には必要不可欠である造影剤の開発を実施した。その結果、動粘度が溶質濃度に依存しない造影剤を用いるトレーサー実験法を世界に先駆けて開発するとともに、従来困難であった飽和材料内部流れの可視化、並びに溶質の保存則に基づく速度場解析に成功した。 水圧破砕き裂の力学的挙動計測については、画像間差分を応用した亀裂開口量の新たな評価方法を開発した。この方法は、亀裂内に流体が進入する前後での画像間差分を実施することにより岩石の不均質性を除去出来るという特徴を持ち、花崗岩のように比較的粒径の大きい不均質な岩石材料についても亀裂の変形挙動の計測が可能であることを明らかにした。 これらの成果は、資源素材学会誌「資源と素材」に論文として発表する予定である。さらに、平成15年11月6日〜7日に熊本で開催する「X線CTの地盤工学への応用に関する国際ワークショップ」においても成果発表する予定である。
|