本研究は、申請者が以前の研究で単離した約300種類の春化関連候補遺伝子の中から、その発現変動が春化により強く連動するものを同定し、春化機構への関与を探ることを目的として行った。 まず、300種類の候補遺伝子をPCRを用いて増幅し、一定濃度に調製した後ナイロンメンブランにドットブロット装置を用いてブロッティングした。そして、この操作を繰り返すことで複数のDNAアレイを作成し解析に用いている。検出プローブの作成には、春化要求性が異なるオオムギ6品種(ホテイムギ、コウゲンムギ、ハルナムギ、ナカイズミザイライ、カイケイ22号、リクゼンムギ)を用いた。具体的には、各品種を一定期間低温処理し、春化が完了する前後の時期にある茎頂分裂組織からmRNAを抽出し、ラジオアイソトープで標識された基質[α-32P]dATPとoligo-dTプライマーを用いて逆転写させたcDNAをプローブとした。現在、各種プローブを用いてハイブリダイゼーションを順次行い春化に連動して発現変動する遺伝子の探索を進めているとことである。まだ解析の途中であるが、これまでに得られた結果では、単独品種の春化要求性に連動して発現変動する遺伝子の存在は確認できるものの複数の品種で発現が連動している遺伝子の存在は確認できていない。今後は上記解析を続けるとともに、その過程で複数の品種で発現が連動する遺伝子が同定できれば、その細胞内局在を始めとした機能解析を進め、春化機構との関連性を探る予定である。
|