研究概要 |
ニホンナシの雌しべ側S遺伝子産物としてS-RNaseが同定されている.S-RNaseにはS遺伝子間でアミノ酸配列を異にする1つの超可変領域(HV領域)が存在し、花粉と雌しべの自他認識に関与しているとされる.HV領域とHV領域に挿入されたイントロンの塩基配列をもとにS_1-S_7遺伝子を識別できるPCR-RFLPシステムを用い,主要品種遺伝子型の推定を進めたところ、S_1S_5であると報告されていた'市原早生'と'明月'にS_1-S_7-RNaseとは異なるS_8-RNaseを見出し、遺伝子型がS_1S_8であること明らかにしている. 本年度は,'市原早生'と'明月'の花柱からmRNAを抽出し,RT-PCRによりS_8-RNase cDNAのクローニングを行い,S_8-RNaseの花柱での発現を確認するとともに,S_8-RNase型のイントロンを含む全塩基配列を決定した.その塩基配列に基づき,S_8-RNaseを特異的に切断する制限酵素を選択し,S_1-S_8遺伝子を識別できるPCR-RFLPシステムを開発した. 一方,まだS遺伝子型が決定されていない'新興'と'新星'にS_1-S_8-RNaseとは異なるS_9-RNase断片を見出し,遺伝子型がS_4S_9であること明らかにした.現在,RT-PCRによりS_9-RNase cDNAのクローニングを行い,S_9-RNaseの花柱での発現を確認している.
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