研究概要 |
パンコムギのRFLPクローンpTag546は品種間で超多型性を示し、転移因子の1種ではないかと考えられてきた。昨年度のコムギ近縁2倍種における本配列の分布調査に引き続き、合成コムギやDゲノム染色体置換系統を用いて本配列のRFLP分析を行った。その結果、一部の合成コムギで両親に無い新たなバンドが検出された。またチモフィービ系コムギゲノムには本配列は存在せず、BあるいはGゲノムを提供したクサビコムギに本配列が存在したかどうかがその後の倍数性コムギゲノムにおける本配列の有無を決定したと推察され、同時にチモフィービ系コムギと二粒系コムギの二起源説を裏付ける結果となった。 主にイントロンに転移因子の挿入が多数報告されているトウモロコシのホメオボックス遺伝子Knotted1のコムギオーソログの領域についてパンコムギのゲノムライブラリーからゲノム配列をクローン化し、A, B, D3つの同祖遺伝子について各ゲノム配列を決定し、転移因子の挿入を調べた。挿入されていた転移因子の進化上の挿入時期を、locus特異的プライマーを作り、様々なコムギ系統で調べたところ、パンコムギにいたる種分化と倍数性進化、および栽培化の各過程で、転移因子の1種でありStowaway familyに属するMITEの挿入が確認された。しかし、これらの配列が現在もその活性を維持しているのか否かについては不明である。
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