本研究は、ABA処理によりナタネ(Brassica napus)小胞子由来胚に誘発される乾燥耐性の機構を明らかにし、ストレス耐性植物を作出することを最終目的とするものであり、本年度は、乾燥耐性能を有するBrassica属植物の小胞子由来胚において発現するLea遺伝子の機能を決定するため、形質転換植物を用いて実験を遂行した。また、これと並行して、Lea遺伝子の発現制御活性の解析を行うため、Lea遺伝子プロモーター-GUS遺伝子を形質転換した植物を用いた、当該プロモーター活性の解析に関する実験を行った。 ナタネ花粉由来胚より単離したLea遺伝子、ME-leaN4(以下、leaN4)を35S及びMAT037プロモーターに、センス及びアンチセンス方向に連結した、pMAT::leaN4、pMAT::Anti-leaN4、p35S::leaN4遺伝子を導入した形質転換体タバコ(T1個体)を用い、0.6〜1.5%NaCl、200〜400mMソルビトール及び、5〜8%PEGを含む培地における生育を調査した。その結果、ソルビトール処理区においてわずかながらME-leaN4発現個体における優位な生育が認められた。さらにpMAT::leaN4ならびに、p35S::leaN4遺伝子を導入した形質転換種子を0〜1.5%NaCl条件下に置床した結果、1.2%以上のNaCl条件下において、非形質転換種子と比較し、高い発芽率を示した。 また、Leaプロモーター::GUS遺伝子のコンストラクトを導入したタバコ形質転換個体の、ABAおよび種々のストレス条件下におけるGUS発現の有無を調査した結果、10、100mM ABA及び5%NaCl処理により著しいGUS発現が、また400mMソルビトール及び乾燥処理においてもわずかながらGUS発現がみられた。その一方、低温(4℃)によるGUS発現は認められなかった。さらに、pLeaのdeletionクローンを作製し、トランジェントアッセイを試みた結果、各deletionプロモーターの下流に連結したGUS遺伝子における発現誘導に差異がみられた。
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