作付体系の中での効果的な導入を図るため、冬コムギの日射利用について定量的に評価した。品種バンドウワセを西東京市で10月下旬に播種し、疎植区と密植区(畝間34cmと17cm、苗立ち密度33本m^<-2>と198本m^<-2>)を3反復乱塊法で設けた。1m^2の面積で経時的に13回サンプルした。裁植密度ごとに群落内4箇所、管型日射計を畝に垂直に地面に置き、群落上部には管型日射計1台と全天日射計1台を置き、それぞれの地点での日射量を測定した。日射利用効率は、積算受光量に対する地上部乾物重の増加の直線回帰式の傾きから求めた。最大葉面積指数は疎植・密植でそれぞれ3.2、6.4であり、吸光係数は疎植区でより大きかった。密植区では3月中旬に遮光率が86%まで達していたが、疎植区では4月上旬になって82%に達した。出穂日の地上部全乾物重は密植区が疎植区よりも大きかったが、出穂前後2ヶ月間の平均の個体群成長速度は両区の差はほとんど見られなかった。開花後の穂重の増加は、開花期までに茎葉部に蓄積されていたバイオマスの転流によって、密植でより高く維持された。出穂前後2ヶ月間の日射利用効率は疎植区でわずかに高かった(1.8vs. 1.7g MJ^<-1>)。出穂後1ヶ月を過ぎると、枯葉数が増加し葉面積指数も激減し、両区とも日射利用効率も著しく低下した。日射利用効率は、受光量を測定する場所よりも、乾物重測定誤差によってより大きく変動した。また、太陽南中時の瞬時の遮光率の測定から日射利用効率を計算すると、疎植区では3%、密植区では2%大きく見積もられた。疎植区では1個体当たり穂数、1穂当り小穂数、1小穂当り子実数いずれも密植区よりも大きくなったが、面積当り穂数に勝る密植で疎植よりも子実収量は25%高かった。以上より、出穂前の早い受光量確保と開花後の日射利用効率の維持が、高いレベルでのコムギの安定生産に必要だと示唆された。
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